寓話


せかいがあり、せかいにはいきものがいました。
なにもかもがたったいっぴきずつしかいないせかいに、たったいっぴきのおおかみがおりました。

たったいっぴきのおおかみは、いつもたくさんのたったいっぴきのいきものをたべました。
おとといはたったいっぴきのきつねをたべました。
きのうはたったいっぴきのとりをたべました。
たったいっぴきのいきものをたべて、たったいっぴきのおおかみはくらしました。

たったいっぴきのおおかみは、たべものをさがしていました。
あちらこちらをあるきまわって、たべものをさがしました。
きれいなくさむらのなかに、まっしろのくものようないきものをみつけました。
おおかみはみたことのないたったいっぴきのいきものにちかづいてみました。
たったいっぴきのいきものは、おおかみをじいっとみると、にっこりとわらいました。

「あなたもたったいっぴきなのね」
「おまえもたったいっぴきなのか」

しろいたったいっぴきのいきものはひつじといいました。
おおかみはひつじのことがだいすきになってしまいました。
たったいっぴきどうし、なかよくしようとおおかみはおもいました。

おおかみはひつじをよろこばせようとおもいました。
たったいっぴきのうさぎをとってきて、はんぶんずつたべようといいました。
するとひつじはめえめえとなきだして、こういいました。

「たったいっぴきなのに、たべてしまうなんて」

おおかみはいいました。

「たべなけりゃしんでしまう」

ひつじはめえめえなきながらいいました。

「たったいっぴきをたべたら、たったいっぴきがいなくなってしまうわ」

おおかみは、しかたなくとってきたたったいっぴきのうさぎをひとりでたべました。

それからおおかみは、ひつじのためにいっしょうけんめいくさをあつめました。
みどりいろのくさをあつめると、ひつじはうれしそうにそれをたべました。
ふたりでおいしいみずをさがして、ならんでみずをのみました。

ひつじはおおかみのためにくさをわけてあげました。
けれど、おおかみはそれをたべませんでした。

「おなかがいっぱいなんだ」

おおかみはひつじのそばでごろりとよこになって、めをとじました。
ひつじはおおかみのきれいなけなみをやさしくなめてあげました。
おおかみはきもちよさそうなかおをして、うっとりしていました。
おひさまがしずんでも、おおかみはねむっていました。
おほしさまがきらきらひかっても、おおかみはねむっていました。
おつきさまがさようならをしても、おおかみはねむっていました。
ひつじはおおかみをなんどもやさしくなめました。

たったいっぴきのおおかみは、もうめをさましませんでした。
ひつじはおひさまできらきらひかったおおかみのよこで、めえめえとなきました。

たったいっぴきのいきものしかいないせかいのおはなし。



たったいっぴきしかいないせかいで
はじめてみつけた、たったいっぴきだけ、すきないきものを



「coyote」青木健一郎さまからいただきました。
PICTに置いてあります獣パロに萌えてくださった。嬉しかったです。
私はときどきこのおはなしを思い出して涙ぐむときがある。かなしくってあたたかいから。
大スキな作品です。あおさん、ありがとうございました。

勝手ながら挿絵を描かせていただきました。いつか絵本にしたいです。

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